ザンちゃんのブログ 師匠と弟子 パラレル1

「本当に弟子を取る気があるんですか!?」
 大魔法使いエイラルソスを囲んでいる人達の一人が叫んだ。クロートゥルは目を丸くしながら、その光景を眺めていた。
 大魔法使いエイラルソスが、弟子を取りたいので希望者は名乗り出て欲しいと言い出してから、2年程が過ぎていた。彼の弟子になりたい人間なんていくらでもいるだろうと思われていたのだが、実際には彼が断り続けていて、未だに彼は弟子を募集中だった。優秀な息子が居るので、本当は弟子など必要と思っておらず、彼は人々をからかったのだろうと言われるようになっていた。しかし、諦めきれない人々も居たようで……。
 そして、冒頭に戻る。
「お前達は何か勘違いしているようだな。」
 エイラルソスが溜め息をついた。騒ぎ立てていた人達が黙る。「わたしは誰でも弟子にするなどとは言っていない。」
「……そりゃそうだろうけど。」
 誰かが呟く。
「この大魔法使いの弟子だぞ。わたしが習得してきた全ての魔法を受け継げるだけの才能がなければ話にならん。」
「やってみなければ分からない……。」
 他の誰かが不満そうに呟くと、エイラルソスが再び溜め息をついた。
「どんなに努力していても、才能の差というものがある。才能に溺れ怠けている天才にだったら、努力する一般人は勝てる。だが、努力する天才にはどうしたって勝てない。生まれつきの能力とはそういうものだ。」
「うーん。そうかな?」
 クロートゥルが唸ると、エイラルソスを含めた皆がこちらを見た。クロートゥルは、顔が熱くなるのを感じた。さっきまでは傍観者として、呟いた他の人を平然と見ていたのに、自分が同じ立場になると、ここまで恥ずかしいものなのかと焦る。そんな彼の気持ちを他所に、エイラルソスが口を開く。
「例えば、走るという行為。赤ん坊、身体に障碍でもなければ誰にでも出来る。だが、それがスポーツの世界ならどうだろう? 近所では評判でも、学校にいけば上が居る。そしてそこで一番早くても、もっと広い世界に行けば、当然更なる上が居る。同じように努力しても、それだけでは埋められない壁がある。」
「……そっか。」
 恥ずかしさから回復したクロートゥルは、彼の言葉に聞き入り、納得することが出来た。
「実際には、良いコーチが付くだとか、良い設備に恵まれるだとかの環境も影響してくるので、そんなに単純な話ではないが、言いたいことは分かるだろう? そして、魔法は更に厳しい世界だ。走るという行為と違って、生まれつきの才能だけで、もう出来る人間と出来ない人間が居る。」
 エイラルソスが息をつく。
「半年間の間、その才能を持った人が出ていないと言うことですよね……。」
 もう無理なんじゃと続けようとしたクロートゥルは、エイラルソスが側にやって来て仰天する。
「そうだったんだが、やっと現れた。待った甲斐があったようだ。」
 エイラルソスに腕を取られた。彼がホッとしたような表情で言った。
 騒然となる中、強引に連れて来られたクロートゥルは、エイラルソスが家に入るのをぼーっと見ていた。玄関のドアが閉まってもぼんやりと立っていたが、クロートゥルが付いてきていないことに気付いたエイラルソスが出てきて、腕を引っ張られた。
「何をしてるんだ。」
 睨まれてしまった。
「いや、だって……。本当に俺なんですか?」
「お前だって、わたしの弟子になりたくてあそこに居たんだろう。今更、何を言っているんだ。」
 呆れた顔で言われてしまう。
「そうですけど、あんな話を聞いた後で、じゃあ自分には才能があるから弟子になれる……なんて思うわけもないです……。」
「そうかもしれんが、実際、お前には才能があるんだ。それでいいだろう。」
「そうですね。気持ちを切り替えることにします。……あ、俺の名前はクロートゥルです。」
「そうか。クロートゥル、これから宜しく。」
 ということで、クロートゥルはエイラルソスの弟子になった。


「クロートゥル、わたしの家族だ。妻のサーシャ、息子のセーリクトだ。」
 エイラルソスが家族を紹介してくれた。
「初めまして。弟子になったクロートゥルです。」







★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 魔法使い版セーリクトが出したくて。
 エイラルソスに厳しく育てられて、魔法を使い機械みたいになっていたけど、いい加減でだらしないクロートゥルとの交流で
普通の子供らしくなっていく……みたいなお話。
 エイラルソスはそれが目的で弟子を探していたけど、だらしなくて子供好きで、なおかつ大魔法使いになれるだけの才能があるという贅沢すぎる要求を満たす人材が現れなくて……。どれか妥協しようかと考え始めた所にクロートゥルが現れた。