ザンちゃんのブログ 師匠と弟子11 攻撃魔法

  クロートゥルとエイラルソスはラアラナ国の側に居た。勇者が冒険を始めた国で、出現モンスターがとても弱い。
「弱くてもモンスターはモンスター……。怖いです……。」
 クロートゥルは震えた。「ねえ師匠、要は攻撃魔法が練習出来ればいいんですし、動物とかじゃ駄目ですか? 倒した後、美味しく食べられるし……。」
 二人は、攻撃魔法を実戦で使う練習の為に、モンスターが弱い国へやって来ていた。
「罪もない動物を攻撃魔法で殺すことに加担するなんて嫌だ。残酷なことを言うな。」
 エイラルソスが不快そうな表情を浮かべ、クロートゥルはお尻を一発叩かれてしまう。
「いてて……。で・でも、火の魔法で焼くんだから、食べられますって。」
「焦げて食べられない肉が出来るだけだ。お前は自分の技量を理解してないから、そういうことが言えるのだろうが……。」
「……木の的はカスしか残らないくらい焼けちゃいましたけど、生き物は……。」
 この実戦の前に、エイラルソスが作った木の的に当てる練習をした。エイラルソスへ、最初は焦げるくらいの威力しか出ないだろうと言われたのに、クロートゥルが放った火の魔法は的を焼き尽くしてしまった。それを見たエイラルソスは、思っていた以上のクロートゥルの才能を喜びながら、こんなに力があるのなら、すぐ実戦でいいだろうと言い出した。
 それで、クロートゥルはこんな初級冒険者の訓練所とでもいえる場所にいるのだ。
 1回しか練習していないので、クロートゥルは大いに不安である。これが普通の魔法だったら、練習と思うと、途端にめんどくさくなるのだが、動く相手、しかも、モンスターともなれば話は別である。
「焼けなかったら焼けなかったで、苦しめることになるだろう。」
 だが、エイラルソスは首を縦に振ってくれそうにない。
「うう。」
 クロートゥルは俯いた。
「大体、お前が貴重品過ぎて持っているのが怖いとまで言ったシールドリングを身につけているのだから、例え攻撃を受けたとしてもダメージなどない。」
「そうかも知れませんけど……。痛くなくても怖いものは怖いんです。師匠が怒ってたら、ぶたれなくても怖いし。そういうもんです。」
 そろそろびんたが飛んできそうだが、クロートゥルは怖いので食い下がってしまう。その態度に溜め息をついたエイラルソスが、ふと、あらぬ方を向いた。
「ほら、情けないことを言っているうちに、モンスターがお前の気配を嗅ぎつけたぞ。」
「ひえっ。」
 現れたモンスター達は一見、動物の鼠と兎に見えた。だが、よく見ると、鼠も兎も凶暴そうで、動物とは明らかに違う凶悪な牙や爪を持っていた。動物と勘違いして警戒しない旅人を襲って食らう、質の悪いモンスターなのだ。とは言え、無害な動物に擬態することが出来るサイズなので、油断さえしなければ、それ程の脅威ではない。最悪、走って逃げられる筈だ。
 ちなみにエイラルソスは気配を消す魔法を使っている。そうしないと、彼の強さを恐れて、モンスターが寄って来ないのである。
「うう、二匹も……。」
 諦めたクロートゥルは、へっぴり腰でモンスターと向き合った。
「攻撃をされても、ダメージを受けなければ、呪文の詠唱を妨げられることはない。安心して倒すといい。」
「はい……。」
 エイラルソスの言葉は、クロートゥルにとって何の慰めにもならなかった。かといって、逃げ出したら、こっぴどくお尻を叩かれて叱られそうだ。「覚悟を決めなきゃ……。」
 クロートゥルは目を閉じると、攻撃呪文の詠唱を始めた。
「こらっ、目を開けないと、モンスターが見えないだろう。無駄打ちしたらどうするんだ。」
 エイラルソスに叱責されて、クロートゥルは身を竦める。モンスターも怖いが、エイラルソスも怖い。叩かれると痛い分、エイラルソスの方が怖いかも知れない。そう考えたクロートゥルは、少し気が楽になってきた。




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 攻撃と回復魔法の習得の描写をしていなかったので、書くぜー。
10 一人前の魔法使い
11 大魔法使いの愛弟子
の間に入れる。