ザンちゃんのブログ 近重家 キヨテルを買った7

 家に帰ってきた。キヨテルが昼食を作ってくれている間、近重はキヨテルのイラストを描くことにした。まだキヨテルが歌ったメロディしかなく、伴奏を作っていないが、カバーなので、それ程手間をかけずに、ボカロ曲のアップロードという経験をしてみたい気持ちが強かった。反応は良くないだろうが、それは当然なのでどうでもいい。
「調教は大変だったけど、伴奏がなくてあまり手間がかかってないんだから、イラストもシンプルな物がいいよな……。」
 ペイントソフトでラフを描く。「イラストに手間をかけたら、メインがイラストのようになるし……。っても、人気絵師レベルの絵が描けるわけでもないけど。」
 イラストに集中していると、ノックの音がして、キヨテルが入ってくる。
「ご飯が出来……。わぁっ、可愛い僕ですね!」
 キヨテルが近重の肩に手をかけて、パソコンの画面を覗き込んできた。「マスターって、イラストを描けるんですね。吃驚です。」
「大した物じゃないけどさ。」
「そんなことないですよ。とても可愛いです。女の人が描いたみたいですけど。」
 キヨテルがクスッと笑う。「でも、どうして、僕のイラストを描いているのですか?」
「ボカロ曲はイラストとセットで上げられてることが多いから。MMD静止画でもいいんだけどさ、これ、伴奏もない手抜き曲だから使い辛くて。」
「えっ。伴奏を付けましょうよ。」
「んー。どうせ伴奏を作るなら、オリジナル曲でやりたい。」
「……マスターって、DTMの経験があるんでしょうか?」
 キヨテルが部屋を見回している。
「ないけど。」
「でしたら、カバー曲を再現するのも、勉強になると思いますよ。」
「そういうもん?」
「はい。」
「なら、やるか。」
 近重は、描きかけで放置していたイラストを保存すると、ペイントソフトを終了した。そして、とりあえず……と手に入れてあるフリーの作曲ソフトを起動する。有料のを買ってあるのだが、ネットの検索で見つけた作曲講座はフリーソフトでやっていて、有料のソフトにも生かせると書いてあったので、まず、フリーで覚えるかと思っていたのだ。ソフトの使い方を覚え直す必要もあるし、二度手間になる可能性もあるが、挫折するよりはよっぽどいい。
「ちょっと待って下さい。ご飯を食べてからにして下さいよ。」
「あ、そうだな。」
 本当は食べないでやりたかったのだが、またキヨテルに怒鳴られそうなので止めておいた。
 『作らせておいて食べないのも悪いしな。』
 近重はパソコンをスリープさせると立ち上がった。
「あの……マスター。」
 キヨテルがおずおずとこちらを見上げた。
「何? どうした?」
「僕にはお昼ご飯は必要ありませんし、マスターがご飯を食べている間、マスターが描いた僕のイラストを見たりと、パソコンを使っていてもいいですか?」
「いいぞー。ペイントソフトは、これな。メニューから、最近使ったファイルってのを選べば、さっきのお前のイラストが出てくるぞ。」
「丁寧に有り難う御座います。」
 キヨテルがぺこっと頭を下げる。
「別に、そこまで気を遣わなくても。」
 近重は苦笑すると、キヨテルの頭をぽんぽんと叩いた。


 夜。フリーの作曲ソフトで伴奏を作ってみたり、有料の方も試したりと色々して疲れた近重は、部屋を出ると、テレビを見ているキヨテルの隣に座った。
「あ、マスター。カバー曲の作成はどうですか?」
「楽譜通りに打ち込むだけだから簡単かなと思ったけど、そうでもないようだ。」
「う……。僕は余計なことを言ってしまいました……。」
 キヨテルがしょんぼりしている。
「いや、ソフトの勉強になるし、俺はキヨテルの言う通りにして良かったと思ってるぞ?」
「そうなのですか。」
「オリジナル曲から始めていたら、ソフトの使い方は分からないし、作るのは大変だしで、挫折したかも知れない。でも、カバーなら、元のが再現出来てればいいわけだから先が見えやすい。」
 近重が笑いながらキヨテルの頭をぽんぽんと叩くと、赤くなったキヨテルは顔を背けた。
「それならいいです。」
「……あのさ、キヨテル。」
「はい。」
「嬉しいなら嬉しい、嫌なら嫌と分かりやすい態度をとって欲しい。」
「……えっ。」
「だって、キヨテルはすぐ赤くなって後ろ向くだろ。照れてるんだと思うけど、もしかしたら嫌なのかなと思ってさ。」
「いえ。嬉しいんです。」
「だったら、そう分かるようにして欲しい。」
「わ・分かりました。もう、後ろを向いたりしないようにします。」
 キヨテルがぎこちない笑顔を向けてきた。
「うん。」
 暫く二人でテレビを見ていた。CMになると、キヨテルが口を開いた。
「前の彼女と別れてから長いと仰ってましたけど、彼女のお尻を叩いていたから別れることになったんですか?」
「急に何だ。」
「気になってしまって。」
「いや、まあ、いいけどさ。」
 近重は苦笑いする。「尻叩きは関係ないな。それが原因で別れるの嫌だからさ、付き合いが浅いうちに言うようにしてるんだ。」
「そうなんですか。」
「ん。特殊性癖の持ち主は苦労するぜ。」
「普通じゃないっていうのは、大変なんですね……。」
「うん。」


 それから暫く経ったある日。夕食後、部屋に籠もっていた近重が出てきた。
「キヨテル、カバー曲が出来たぞ。聴いてくれ。」
「わぁ。出来たんですか。楽しみです。」
 近重に腕をとられたが、彼を追い越す勢いで部屋に向かったので、あまり意味が無かった。
 部屋に入ると、近重がPCの前に座った。彼がプレイヤーの再生ボタンを押すと、前奏が流れ出す。キヨテルは目を閉じて、曲に集中する。
「どうだった?」
 曲が終了すると、近重が不安そうな表情で訊いてきた。
「元の曲を知らないんですけど……。とてもいいと思います。」
「原曲を知らないと良く聞こえるのか……。」
 近重が嬉しそうな顔になる。
「マスターは納得してないんですか?」
「うん。CDを持っていたから、原曲を聴きながら作ってみたんだ。だけど当たり前たけど、全然違うんだよな。素人が初心者向けのお手頃価格のソフトで初めて作ってみたものと、何人ものプロが高級な機材を使って作ったものが同じだったら、むしろ吃驚だけどさ……。でも、あまりにも違うから、馴染めなくて。」
「それでもマスターは、挫折することなく、カバー曲を完成させることが出来ました。元はやる気のなかったカバー曲の曲作りなのに。僕は意味のあったことだと思います。」
「言われてみれば、そうだな。目標を高く設定したのはいいけど、覚えることが多くて……。投げ出すんじゃないかって不安になったりもしたんだ。たけど、こうして一曲完成させることが出来た。目標を達成することが出来るか分からないけど、一歩を踏み出せた。」
 近重がにっこりと微笑んだ。「キヨテルが助言してくれたお陰だ。有り難う。」
「マスター……。」
「キヨテルにはいろんな意味で世話になってるな。これからも宜しく。」
「はいっ。マスター。こちらこそ、宜しくお願いします。」



****
近重の家に友達が遊びに来る
 先生があまりにも人間なので信じない
 先生に、近重にいくら貰ったとか言う
 背中を見せて、本物だと証明する
 先生の私服姿や対等に扱ってるところを見て、アンドロイドなんてペットみたいなもんだろと言い出す友達
 先生は急に部屋に行くように言われ、戸惑いつつも従う

 部屋でぼんやりしているうちに寝てしまう先生
 パジャマに着替えないまま寝ていたので、部屋に入って来たマスターにちょっとお仕置きされる
 落ち込んでいると、マスターがキヨテルは大事な存在だと言う
 家族……弟のつもりだと
 どうしてそんなことを? と思いつつ、友達と何かあったのかと思う先生

----
……弟ってなんか変な気もするけど、仲間もなんか違う気がするのよねえ
 仲間って言うと、スポーツとか冒険とかなんかそれ系を連想するの
 まー、扱いが悪いとこもあるけど、近重は近重なりに想ってる……と
 欲を満たす為にお仕置きはするけどな!w



★★★★★★★★★★★★★★★★★★
 この話は、キヨテルが教育実習生になるところ・・・本編が始まる直前までいったら終わりの予定。

 サイトの目次↓

近重家