ザンちゃんのブログ インストール前

 ここは、ボーカロイド用アンドロイド育成施設。その名の通り、ボーカロイド用アンドロイド達がマスターとの接し方などを学ぶ為の施設だ。学習を終えたボカロ達はシリアルコードを貰い、後輩達の世話をしたり、復習として、施設の清掃をしたりなどして購入を待つ。
 購入済みボカロはインストールを待つだけなので、その為の部屋は小さかった。小さな椅子と机、鏡、そしてベッドしかないその小部屋にキヨテルはいた。彼は通販で買われたので、そこに数日待機していた。
 キヨテルは、ベッドに座ってそわそわしていたが、溜息をついた。
「店頭で買われたのならインストールされるまでの時間も短いでしょうけど、通販って輸送時間がかかるのが……。いつインストールされるのか分からなくて、落ちつきませんね……。いえ、買われたものの、インストールされないで放置される例もあるって聞きますし……。そうなると、この小部屋から出られないらしいですね……。」
 呟いてから、慌てて頭を振る。「そんな恐ろしいことを考えるのは止めましょう。そんなことより、マスターの前でする挨拶のことを考えなければいけません。」
 キヨテルは立ち上がると、鏡の前に立ち、優しい顔を浮かべた。
「初めまして、マスター。ボカロ先生、氷山キヨテルです。楽しく歌っていきたいです。」
 更にニコッと微笑む。「……何かありきたりじゃないですか。優しい小学校の先生という設定が生かされてない気がします……。」
 パッケージのポーズを再現する。
「初めまして、マスター。ボカロ先生、氷山キヨテルです。これから、一緒に楽しく歌っていきましょうね。」
 キヨテルは再び溜息をつく。「……先生らしいとは思いますけど、これだと、何か偉そうじゃないですか。大体、ポーズをとることは出来ても、出席簿を持っていませんから、さまになりません。」
 明るい表情を浮かべる。
「初めまして、マスター。ボカロ先生、氷山キヨテルです。歌だけではなく、楽しく仲良く生活していきたいです。」
 腕組をすると、唸った。「女性マスター相手ならいいかも知れませんが、男性マスターには、ちょっと嫌がられそうですよね……。注文は男性の名前でしたし、性別を選ぶような挨拶はちょっと。」
 『マスターって、どんな人なんでしょうね。難しいと言われてる僕を買うくらいですから、既に沢山のボカロを持っていて、腕のある方かもしれません。そんな方だったら真面目で厳しいでしょう。でも、その分やりがいもありそうです。
 でも、曲作りに関して素人の方で、一緒に成長していけるタイプってのも楽しそうですね。』
「どんな方とでも、頑張っていけたらいんですけど。……あ、でも、時々聞くアンドロイド相手だからと、虐待するような方でないといんですけど……。」
 不安になっていると、音声が流れて来た。
「シリアルコード、BXXX-XXXX-XXXX-XXXXの氷山キヨテル、マスターがインストールを開始しました。至急、転送室前へ移動して下さい。」
「誰か呼ばれ……って、僕のシリアルコードじゃないですか。とうとうマスターにご対面なんですね……。あ、感慨にふけっている場合ではありませんでした。早く行かなければ!」


 転送室前へ着くと、扉の前から音声が流れてきた。
「アクティベーションが済むと扉が開きますので、中へ入って下さい。」
「はい。」
 機械音声に返事をしても意味がないのだが、いよいよマスターに会うという緊張で一杯のキヨテルは、そんなことを気にする余裕はない。今まで過ごしてきた、このボーカロイド用アンドロイド育成施設に対する思いも少し浮かんできたが、切ない気持になる前に扉が開いた。
 白い光が溢れてきて何も見えないが、そのまま前進んだ。


 ふと気がつくと、キヨテルは茫然とした表情を浮かべるマスターの前に立っていた。
 『取り扱い説明書を読まずにいて、アンドロイドがパソコンから出て来るのを知らないマスターもいらっしゃるんでしたね。』
 マスターが驚いているので、キヨテルの方は落ち着いた。
「初めまして。ボカロ先生、氷山キヨテルです。これから宜しくお願いしますね、マスター。」
 キヨテルは優しい笑みを浮かべた。



13年11月17日

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 寝る前にネタを思いついたので、起きてから書いた奴。タイトルとか、実際にマスターに会った時の挨拶の台詞とか、大事なとこに限って忘れてるっていう……。

 この小説、最初はキヨテル先生モデルが完成したら作る動画の小ネタだった。
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ぱちぱちと瞬きするようにみえる画面。小部屋を見回すように動くカメラ。手が写り、指を1本ずつ曲げる。
カメラが切り替わり、先生の全体像が写る。ちょっとよろける。
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 人形に魂が入ったとか、別の体に乗り移っちゃったシーンによくある表現だよね。で、動きの練習として、マスターへの挨拶を考えてるシーンまで考えたところで、これ小説として書かないかと思ったのだった。

 もう一つの理由。またしても、Google日本語入力が肌に合わないので、アンインスコした後、にゃぽにいる時、マグさんに教えて貰ったATOKのことを思い出してインスコ。教えて貰った時は、無料体験版がなくて止めたけど、今回、合ったので。新PC欲しかった当時は、有料ソフトをいきなり買うのは無理だったから。
 で、どんな感じなのか知りたくて小説を書きたくなった。小説を書く時に快適に変換出来るのがいいしねえ。その時、他のソフトから辞書を引き継ぎ出来ると分かったので、Google日本語入力を消す前に入れれば良かったとちと後悔w